相続登記義務化と国庫帰属・物納の難しさは致命的な重税に繋がる

政府が閣議決定した土地の登記やルールの見直しの中で、国庫帰属についてですが、実にハードルが高い工程をへる必要があります。そして国庫帰属に23年に予定の相続登記義務化が加わると多くの方にとって非常に恐ろしい現実に直面することに繋がると考えられます。

目次

  • 1 負動産だけが国庫帰属対象(相続放棄対象)ではないと強く問いたい
    • 1.1 相続不動産は抵当権だらけで現金・価値ある資産はなかった為、相続放棄したというが多額の根抵当権が設定される不動産が負動産のはずはない
    • 1.2 冒頭の負動産のキーワードで多くの人は他人事と思われたでしょうが、この話は価値ある不動産を相続した人の話
      • 1.2.1 収益力が多少低いとはいえ、根抵当権設定(借入が出来ている)ことから問題にならないはずです。相続税評価額が市場価格、借入額のいずれよりも大きい状況だったからこそ相続放棄したと考えられます。
      • 1.2.2 不動産の税は重すぎる、ついでに文句を言いたいと思う部分では毎年支払うことになる固定資産税・都市計画税も槍玉にできます。
  • 2 現行法でも不動産は法定相続人がいなければ国庫帰属となるが簡単には国は受け取らない問題
  • 3 相続登記義務化と国庫帰属の高難易度は最恐の組み合わせと言えそうです。
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2023年度に導入見通しの相続登記の義務化と現在検討されている国庫帰属に関しての問題提起の記事

この記事は題材にそってわかりやすく問題、懸念点を示していると思います。

また相続放棄した方がその後、対象不動産の国庫帰属迄の道のりを眺め、その大変さを浮き彫りにしている点も読了の価値があると感じました。

ここで当方がこの良題材を取り上げつつ、別視点の補足や解釈を加えつつ、薄まってしまっている危機感、問題点も上げていきたいと考えます。


負動産だけが国庫帰属対象(相続放棄対象)ではないと強く問いたい

記事冒頭で、触れられる「負動産」のキーワードは、多くの読者への配慮が多分に加わっているからだろうと思います。

しかし、記事の事例(主役の方の不動産、相続財産)が相続放棄したのは、負動産ではないと思われます。


相続不動産は抵当権だらけで現金・価値ある資産はなかった為、相続放棄したというが多額の根抵当権が設定される不動産が負動産のはずはない

ここでは多額の根抵当権が設定されている不動産が問題になっていますが、事業(不動産含む)内容と完全に乖離していたらその根抵当権が設定されること(借入をすること)はできません。

記事中の被相続人の紹介は下記の通りです。

戦後の混乱期に祖父が一代で築いた財産を、一人っ子の父親はそのまま引き継いだいわゆるボンボン。


この部分から読み解く限り、根抵当権設定の対象となる事業は高い確率で不動産そのもの、おそらくは賃料収入だと想像されます。

記事中の主役の方が相続した不動産は負不動ではなく、価値ある不動産であること。そして、後半部の国庫帰属の作業を行った不動産(相続放棄した)は、その内の一つであり、これは確かに負動産の可能性があります。


冒頭の負動産のキーワードで多くの人は他人事と思われたでしょうが、この話は価値ある不動産を相続した人の話

では、なぜ10人からなる相続人は全員相続放棄を行い、税理士も相続放棄を進めたのでしょう?

豪華な自宅はもちろんのこと、テナントビル3棟、アパート2棟、市内のあちこちに複数の土地。


たくさんの価値ある不動産をお持ちでした。

これは、記事中の情報から読み解くに一つは現金がなかったこと、換金性の高い資産の比率が低かったことが大きな要因だと推測されます。

そして、対象の不動産について、テナント・アパートは含まれるものの土地も多いようですし、保有不動産に対して収益力(ランニング)が低かった可能性。

加えて最大の難点となったのは、市場価格と相続税評価額の乖離が大きかったのだと考えられます。


収益力が多少低いとはいえ、根抵当権設定(借入が出来ている)ことから問題にならないはずです。相続税評価額が市場価格、借入額のいずれよりも大きい状況だったからこそ相続放棄したと考えられます。

節税対策、相続対策には不動産がある種不動産業界や税理士さんのキャッチフレーズですが、現実としては節税、相続対策になる不動産のタイプはほんの一握りです。

大部分の非居住性の不動産は、節税どころか他の資産と比べて割に合わない課税対象となります。

補足)不動産の相続税対象評価額は土地は相続税評価額、建物は固定資産税評価額

相続税評価額は相続税路線価から計算していきますが(路線価が定められていない地域は評価倍率:固定資産税評価額に指定倍率を乗じて算出)、路線価というと一般に市場価格の8割と言われています。

ここで多くの方は安心してしまいますが、あくまでその路線(道路に面した整形地)の単価であり、実際の対象不動産が市場価格に対する8割になるとは限りません。

厳密に評価額を算出する場合は、その土地の形状や用途(使用方法等)に合わせそれぞれ補正率・割合が定められており乖離が出にくくなっております。

しかし、相続の現場でそれぞれの不動産を適切に、厳密に評価額を出しているとは限らないようです。

売却相談(相続後)で補正を全くせずに相続処理をしていた事が発覚することが多々ございます。

また、相続税評価額算出は、原価法による評価手法と似ていますが、実際には原価ではなくいずれの不動産でも出来上がり(市場への販売できる状況)での評価が適用されます。

(道路造成費用等一部は補正が効きます)

齟齬が生まれないように加えますと、価値がほぼない(耐用年数を超えても評価上、新築時の13%ほどは評価は残る)建物付きの土地、更地の土地の評価は同じ。

建物解体費用分に加えてなぜか残り続ける建物評価額分が更地の場合と比べて換金時に差額として生まれます。

アパートなどは貸家建付地として借家割合、借地権割合を掛け合わせて自用地としての評価から差し引きますが、ど古いアパート、売るには入居者さんに退去頂いて(立ち退き費用は非常に大きい)、解体費用がやはり大きなネックになります。

(現実に売却をした場合は経費として計上できますが、相続人が保有し続ける選択をした場合の見えない損失の話です)

上記は、非常に多くの方が遭遇するよくあるパターンですが、要点は多くの相続人にとって非常に割に合わない、高い課税と思います。

換金額と相続評価額の乖離。将来的にその不動産が生み出す純TAX後の利益との乖離。市場価格との乖離。

指摘するほどに不動産業界のみならず様々な方面から都合のよくない真実的な部分ではありますが、現実はそういうものです。


不動産の税は重すぎる、ついでに文句を言いたいと思う部分では毎年支払うことになる固定資産税・都市計画税も槍玉にできます。

歴史を紐解けば元は年貢の支払いを現金で払う制度が起源ですから、住宅に課税するのはどう考えてもおかしい!

(土地が生み出す収益に対する税だったのに、事業に供してない住宅からとってはダメだと思います)

住宅は特例がたくさんありますので相続財産としては優秀です。

主題材から離れすぎましたので戻ります。

不動産がお国にとって大きな収入源である(我々にとっては困る)点を捉えつつ読み進めるとここから先、また印象が変わるのではないでしょうか。


現行法でも不動産は法定相続人がいなければ国庫帰属となるが簡単には国は受け取らない問題

そう、受け取ってくれません。

>不動産は国庫帰属となる(民法239条2項)のですが、国が条件をつけて、なかなか受け取ろうとしない実情があるからです。

今回の記事で特に挙げられている国庫帰属の為の条件の一部をみても頭がいたくなります。

1. 更地であること
→建物があれば解体してね。費用は相続人負担で!

2. 抵当権が設定されていないこと
→抵当権は抹消してね。そのための弁済や登記費用は相続人負担で!

3. 境界の争いがないこと
→境界確定をしてね。土地家屋調査士の費用は相続人負担で!

4. 土壌汚染がないこと
→土壌汚染がないか証明してね。地歴調査やレポートは相続人負担で!


上記だけをみても嫌になります。


財務省の「国庫に帰属する不動産等の取扱いについて」も合わせてご参照下さい。

それに加えて相続登記の義務化です。我々不動産業者にとっては業務上の大きなハードルや問題を解決してくれる歓迎の制度なのですが、今回の論筋から捉えると非常に怖いことだと思います。

同様に相続時に利用する事を考える方は多いであろう物納も要件が非常に厳しくハードルが高いことも合わせて触れておきます。

何が何でも相続させる的な意欲を感じます。

人口減少社会で、また所有者不明土地の増加、最終的な処理となる国庫帰属にかかる労力を考えるとそのコストもバカになりません。

税負担が問題ではありますが、このサイクルでは、益々、加速的に我々の負担は増えていくのではないでしょうか。

それを考えると非常に恐ろしい。


相続登記義務化と国庫帰属の高難易度は最恐の組み合わせと言えそうです。

不動業者としては歓迎の相続義務化ですが、国庫帰属、物納ですがこれのハードルがさがらないと国民としては逃げ場がないというのが本音のところです。

当サイトのユーザー様は不動産投資をされている方が大部分を占めます。

資産形成をするということは相続税を増やすということです。

相続時に次の方にとって重要なのは、資産(現金・ペーパー資産などの即金性の高い資産)比率です。

資産形成拡大期はしかたありませんが、ご年齢とステージごとに取得していく不動産も変わっていきますし、物件の入れ替えも必要です。

最終的には(相続発生時)、全資産に対する不動産の比率は3割程度にしておかないと次の方は大変です。十分な準備をしていきましょう。

ここをお読みの方は不動産に明るいかもしれませんが、ご資産を引き継ぐ相続人さんはどうでしょうか?


記事内用語解説・補足
原価法(げんかほう)不動産鑑定評価において、不動産の再調達原価をベースとして、対象不動産の価格を求める手法のこと 不動産鑑定評価のうち、原価法では、時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正 ... [詳細解説へ]
同義語:原価法による評価
関連語:積算価格|不動産鑑定評価|再調達原価|路線価

国庫帰属(こっこきぞく)死亡した方に相続人がおらず、縁故者への財産分与を経ても尚、残余財産がある場合、その残余財産は国庫に帰属する この残余財産の国庫への帰属のことを指します。 不動産においては帰属させる為、様々な要件があり ... [詳細解説へ]
関連語:物納|物納不適格財産|管理処分不適格財産|物納劣後財産

物納(ぶつのう)物納とは税金を金銭以外のもので納入する方法 税金は金銭で納付することが原則ですが、相続税についてのみ例外的に相続財産による物納が認められています。その際には、延納(納税の延期)によって金銭で納付するこ ... [詳細解説へ]
関連語:国庫帰属|相続放棄|管理処分不適格財産|物納劣後財産|

相続放棄(そうぞくほうき)相続放棄とは相続人が遺産の相続を放棄すること 被相続人の負債が多いなど相続に魅力が感じられないケースや、家業の経営を安定させるために後継者以外の兄弟姉妹が相続を辞退するときなどに使われます。 相続人で ... [詳細解説へ]
関連語:単純承認|限定承認|国庫帰属|物納|相続登記

相続登記(そうぞくとうき)相続登記とは被相続人が所有していた土地や建物などの不動産の名義変更手続きのこと 相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった際に、その不動産の登記名義を被相続人(亡くなった方)から相続人へ名義の変更の登記 ... [詳細解説へ]
関連語:相続登記義務化|被相続人|相続人|相続財産|名義変更|遺産分割協議

負動産(ふどうさん)負動産とは経済面でマイナスに作用する不動産のことをいう造語 昨今、日本では人口の減少、空き家の増加などの影響で不動産の受給バランスが大きく崩れています。 そのような実情が影響して、自身で取得・保有する ... [詳細解説へ]
同義語:負け組不動産
関連語:空き家問題|人口減少|相続放棄|2022年問題

路線価(ろせんか)路線価とは各種不動産の税金、相続税や贈与税の基となる課税価格を計算する基準 相続税や贈与税の基となる相続税路線価と、固定資産税や都市計画税・不動産取得税・登録免許税の基となる固定資産税路線価があります ... [詳細解説へ]
関連語:公示地価|基準地価|相続税|固定資産税

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