これまでに物件の長期運営にかかる内外・共用部の維持修繕コスト、管理コストや保険料・税金等、各項目に漏れがないように解説してきた。第4回目の今回は、ローンを含めた収支を算出し、厳密なキャッシュフロー推移を把握する術を解説し、最後にこのシリーズを総括する …
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これまでに物件の長期運営にかかる内外・共用部の維持修繕コスト、管理コストや保険料・税金等、各項目に漏れがないように解説してきた。第4回目の今回は、ローンを含めた収支を算出し、厳密なキャッシュフロー推移を把握する術を解説し、最後にこのシリーズを総括する。
融資金(不動産ローン)のランニングコストを計上
ローン返済方式は多くの方が、元利均等返済になるだろう。そのため計算式はエクセルで行うと非常に簡単だ。
エクセル関数を使用して計算すると下記関数を使うことになる。
元利金支払額の計算
PMT関数 | 財務関数の 1 つである PMT は、一定利率の支払いが定期的に行われる場合の、ローンの定期支払額を算出します。 書式 PMT(利率, 期間, 現在価値, 〈将来価値〉, 〈支払期日〉) |
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元金返済分の計算 CUMPRINC関数
CUMPRINC関数 | 開始から終了までの期間に、貸付金に対して支払われる元金の累計を返します。 書式 CUMPRINC (利率, 期間, 現在価値, 開始期, 終了期, 支払期日) |
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期間内の総支払額(PMT関数)から元本返済額(CUMPRINC関数)を差し引けば利息が算出され、これにより元利金支払額、元本、利息の三つが導き出される。
なぜ利息の支払金額を分けて算出する必要性があるかというと、次の税額を計算する際に必要となるからだ。
所得・住民税を割り出し税引き後キャッシュフローを算出
法人の売買法人実効税率で一定となるが、個人の場合は各所得金額によって税率が変わる。
まず前提として対象不動産外の所得金額を算出しておこう。物件を運営する事による税率、税額の変動分を把握しなければ事業計画は立てられない。
注意すべき2点は、ローンの支払い金額の内、費用となるのは利息だけという点。対象物件の築年数、建物構造によって計上できる減価償却費用は異なる。
試算期間に償却できる額を設定する方式が簡単で正確な数値をはじき出すだろう。
不動産を保有することによって生み出されるキャッシュフローを割り出すためには、所得の算出と税額を割り出す必要性がある。まず税額を導くための計算式から進めていこう。
所得税・住民税(法人実効税率)を割り出す工程
1.家賃収入×(1-空室率)×対象期間 = 純収入
2.期間内の不動産支出の合計 = 純支出
3.期間内の利息の合計金額
4.期間内に償却できる減価償却費
課税所得金額 = 1.-(2.+3.+4.)
上記の物件を取得することによって導き出される課税所得金額を自身の購入前の所得額にプラスして税率が決まる。所得税に加えて住民税は必ず10%かかるので所得税+10%として計算してみよう。
それにより税額が割り出せる。法人の場合は税額は一定なので課税所得金額の割り出しのみで構わない。実効税率を確認しよう。所得税率表が国税庁のホームページにあるので確認しよう。
No.2260 所得税の税率 | 所得税の税率は、分離課税に対するものなどを除くと、5パーセントから45パーセントの7段階に区分されています。課税される所得金額(1,000円未満の端数金額を切り捨てた後の金額です。)に対する所得税の金額は、次の速算表を使用すると簡単に求められます。 |
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税率の出し方
物件の課税所得金額と保有前の課税所得金額を合わせての所得税率を算出、住民税率10%を加えた税率(法人は実効税率:一定)
税金額が算出できてようやくキャッシュフローが算出できる。通常、キャッシュフロー計算というと公式があるが不動産賃貸業の場合、個人もいれば法人もいるし、入り組む事もある。
その為、上記までで紹介した計算式を活用できるように整理した計算式を明示したい。
税引き後キャッシュフロー算出の計算式
純収入-純支出-ローン支払金額-税額 = 税引後のキャッシュフロー
上記計算式によって不動産を保有した場合の純キャッシュフローを導き出すことができた。
不動産は購入する前に収入と支出をかなり厳密に算出することが可能だ。
不動産の運営費・コストの全てを洗い出し事業計画を練ろうシリーズのまとめ
不動産投資、賃貸業において運営の収支というのは全ての事業において肝である。しかし、不動産の寿命は長く、賃貸業において対象物件の事業終了期は20~30年、それ以上となり1サイクルを経験するまでに非常に長くかかる。
その為、当初想定していた不動産の儲け・利益よりも少なくその愚痴をこぼす方は相当数存在する。
当初の想定と異なる結果
物件の1サイクル(賃貸開始~解体・売却迄)の運営を経験できるのは20年、30年後と考えると、家業として賃貸業を引き継いだ方か、20年、30年選手の事業者でなくてはならない。
その為、これから不動産賃貸業を営もうという方、不動産投資を開始して数年、10年程度の方だと厳密な事業計画を練れるほどに不動産の収支、運営コストを把握することは難しいのかもしれない。
不動産経営にかかる費用を厳密に把握する手順
長年の不動産運営により様々なコストが発生するが、各設備や修繕のタイミングはそれぞれ異なり、また積立していく修繕費、修繕のタイミングも上手く調整しなければ無駄な税金発生につながる。
このシリーズではまずは修繕部分の各コストとそのタイミングを明示し、事業計画に修繕計画、または修繕保留による売り逃げ等の戦略を練れるように解説してきた。
内部修繕、そしてその修繕サイクルを設定し数値算出をする
第一回目では内部の修繕コスト、ファミリータイプ等で使用する高グレート仕様から、コスト削減重点のグレードまで三種類の価格表等を明示した。
外部・共用部修繕に必要なコストを把握し確保する
短期保有にて売却等の出口戦略を考える場合、保留するケースが多い、外部修繕コストに関して、各構造による適切な積立金の設定方法を明示した。
これは中古物件を取得する際にも取得直後の修繕費が発生するかの目安にもなるだろう。
管理・清掃にかかる費用
管理にかかる毎月の費用として管理委託をしている場合、自主管理の場合共に対応できるよう解説した。特に清掃に関して、物件の規模、建物の大きさ、土地の大きさから清掃に掛かる費用がどの程度必要かはあまりみない情報だったかもしれない。
水道光熱費
水道光熱費に関しても物件の規模により設定金額が難しい部分だろう。またエレベーターなどの設備の有無によって変動する他、保守・管理費も必要になる。
管理や清掃、光熱費等、これらは第二回で解説した。
![]() 【第2回】不動産の運営費・コストの全てを洗い出し事業計画を練ろう | 前回は、建物内部、室内コストの洗い出しについて解説した。第二回目の今回は、建物外部・共用部の修繕費を明確に把握し長期保有に耐えうる積立金の設定、修繕計画の策定する方法、管理にかかるコストをまとめ、必要事項を事業計画に組み込めるよう順に解説していく。 … |
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固定資産税・都市計画税
固定資産税、都市計画税等の税金はすでに運営している物件であれば問題ないだろう。しかし、新規取得を検討している物件で、その税額が判明しない段階でこの費用の算出が必要になることは多々ある。
保険料金
新規物件取得に重点を置いている方には有用な情報だったではないだろうか。物件情報から、固定資産税・都市計画税の算出の流れ、保険料の算出など毎年かかる費用について解説した。
入退去にかかる費用を把握し、サイクル把握
入退去にかかる費用はすでに物件を保有し、賃貸経営をされている全ての方が経験済のことだが、これから不動産投資を行う予定の方に向けてまとめた。
振込手数料、立ち合い費用等こまかな費用の計上漏れでも月日の積み重ねはその額を大きくする。一つ一つの項目の費用と役目を添えて第3回で解説した。
![]() 【第3回】不動産の運営費・コストの全てを洗い出し事業計画を練ろう | これまでに建物の室内・外部・共用部の維持/修繕費用と賃貸経営の基本的なランニングコストの見立てについて解説してきた。第3回目の今回は、賃貸経営中に非定期的な支出が伴う賃借人の入退去にかかる費用と損害・地震保険等の料金、各算出について一つずつ説明する。… |
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ローン利用の場合、支払い、試算期間の支払い金利の把握
不動産の運営において大部分の方が、融資(ローン)を利用する。
その為、この記事ではまず、皆様が普段使っているだろう、計算式もある程度複雑になることから、エクセルの関数を用いて計算する方法を交え解説した。
所得・住民税(法人税)と税引き後のキャッシュフロー
この融資の支払いと共に、税額の算出が初心者には把握しがたい部分だろう。減価償却費の計上等様々な絡み合いのもとに税額もきまる。
これらの解説を本記事前半で解説した。
全てを把握する理解とシミュレート
このシリーズでは、不動産の収支を厳密に把握し、将来予定される運営成果のシミュレートを可能な限り厳密に導き出せるようになることを目的として紹介してきた。
しかし、数字のこと、費用のかかるタイミングもそれぞれ異なることから全体の把握がし難いともいえる。
そこで当社ではこの運営収支に関してこのシリーズで紹介してきたその全てを網羅し、更に実際の事業計画に合わせてシミュレーションが行えるツールを提供している。
各記事の下部で紹介してきたが、実際のところ、この収支の把握や何が変動するとどの成果に影響するのか等の理解はシミュレートを弄った方が早いだろう。
恐らく読者の方がこれまでに目にしてきた他の様々なシミュレーションソフトとも一線を画す。是非、ご利用頂きたい。
ご利用はログインしてメニューの「運営費計算」にて行って頂ける。
また、ユーザー登録ページでシミュレートの詳細のご案内他、ユーザー特典を紹介しているのでご覧頂きたい。
あとがき
運営収支の話という興味をもつのも難しい話だったと思う。
しかし、経営をする、経営再建、物件の再生の為には精度の高い数字が必要不可欠である。正確な数字があるから事業計画を練れる。
実際に、不動産投資、経営で失敗したという人の多くはこの運営中のキャッシュアウトに耐え切れずに初めて動き出す。
中にはリカバリーの手段として売却を試みるも思う値で売れないと知り、愕然とする例も多々ある。
多くは不動産運営にかかる収支、キャッシュコントロールの不備に端を発している。運営前からかかるものはある程度決まっているのだ。
知っていると思い興味を持てなかった人も多いだろう。
読み終えてみて、どうだろうか。
貴方はその全てを把握していただろうか?
知っているという認識は非常に多くのリスクを呼び込む要因になる。
厳密な収支計画がなければ机上の空論しか描けない。
事業計画上、予想していなかったコストが発生するものほど困るものはない。何度も読み返す類の記事ではないがコスト洩れが無いように十分に把握するようにして頂きたい。
数多くのシミュレーションソフトが出回るが…
不動産投資家の中で数々のシミュレーションソフトが出回るが多くの場合、重大な計上漏れがある場合が多い。
個人的な経験則ではあるが、未だ細やかでほぼ全てを正確に計上し、シミュレートするツールに出会ったことがなかったのがこのシリーズを書くに至ったきっかけだ。
皆様の役にたつ記事であったことを願う。
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